羨望
可愛い女の子がいたらついみてしまう。
ああ、可愛いなぁと内心で素早くため息をついて、ギュッと心臓が締め付けられる。
何度でも顔をみたくなってしまう。できることならば、近くに寄っていって心ゆくまでジロジロと鑑賞したい。
タイプの女の子がいたとき、たぶんわたしはその女の子になりたいと願う。付き合いたいとか、やりたいという事よりも、もっと深いところではその子自身になりたいと思うのだ。
その子としてお洒落をして、街を歩いて人の目を意識する喜びをまとって…。
整った顔立ち、美しい顔、品のある雰囲気、細い足、センスのいいファッション、性格の良さそうな笑い方…、そういうものを視界の片隅に一瞬でも捉えるなら、イナズマのようにわたしの脳内ネットワークを神経間をさまざまな信号が駆け巡り、前頭葉を何度も刺激する。
そして心が苦しくなってくる。ああ、なんでああいう風に生まれてこれなかったのだろう。ああいう風に生まれてきたらどんなに人生は楽しかっただろうに!
誰と付き合うも自分の意思次第。あらゆることを自分の下に跪かせ、どんな男もかしづかせられるポテンシャルを秘めている。
すべては、せかいは思い通りである。
その上ストイックに努力でもしてたらもう無敵である。そんな人生もあるのだ、と、あとあと一人きりになってから大きくため息をつく。
その輝き、その若さ、その容姿の威力に比べたらわたしの存在と人生はゴミ。
自分の好きなものありのままに生きているわけでもなく、だれかの顔、だれかの存在に憧れていきているだけだった。